前回は踵でしたので、今回は脛(すね)に注目してみます。
すねの痛み、シンスプリント

シンスプリント(Shin splints)は、脛の内側、主に内くるぶしの上あたりに痛みを生じる疾患です。
走ったり歩いたりすると痛む
練習後に痛む
脛を押すと痛む
骨がきしむ感じがする
いったん痛みが治まったのに運動を再開するとまた痛む
などの症状があります。
骨折時のような激痛ではなく、鈍い痛みや違和感が特徴です。
痛みの程度が低いため、我慢して運動を続けてしまう方も多くいます。
すると日常生活への支障が出たり、競技の休止を余儀なくされたりする可能性があります。

原因は、脛骨の内側に付着しているヒラメ筋や長趾屈筋、後脛骨筋が脛骨の骨膜を引っ張り続け、炎症が起こるから(=骨膜の炎症)だと考えられています。
「過労性骨膜炎」「過労性脛部痛」とも呼ばれます。
サッカーやバスケ、陸上競技など、ダッシュやジャンプの動作が多いスポーツ選手に多く見られます。
またランナーの発生頻度も高いです。
シンスプリントの予防と対策① 足長・足幅・足幅周の合う靴を

小中高生から成人、シニアまで、主にスポーツ選手のシンスプリントの患者さんを多く診てきて、気づいたことがあります。
それは、足幅の細い方が多いということです。
恐らくご自身の足に対して靴の幅が広すぎる、甲幅周が長すぎるシューズを履かれているのだと思われます。
反対に、足長でシューズを選ぶと足幅が細く脱げそうになるため、あえて足長よりも短い(=小さい)靴を無理して履いている方もいらっしゃいました。
靴の中で足が動くのを防ぐため、あるいは足先が窮屈なため、足指は過剰に踏ん張っています。
すると連動して、ヒラメ筋や長趾屈筋、後脛骨筋が過剰に緊張し、骨膜の炎症につながります。
恐らくご自身では、指が踏ん張っているという自覚はないでしょう。
本当にサイズの合った靴を履いて同じ動作をした時に初めて、「今まで履いていた靴で起きていた足の状態は何だったのか」と気付くものだと思います。
何度も申し上げていますが、自分の足長・足幅・足幅周に合った靴は、足に良いのです。
実際、自分に合ったシューズに履き変えたことで、シンスプリントの症状が改善された患者さんは決して少なくありません。
シンスプリントの予防と対策② 足首を安定させる靴やインソールを
走っている時も歩いている時も、地面には片足だけを着いています。
接地時にはご自身の体重や衝撃を、全て片足で支えているのです。
接地時にもしも足首が不安定だと、ヒラメ筋や長趾屈筋・後脛骨筋に力が入ります。
筋肉が力んだままの状態が続いた結果、脛が痛くなるのです。
対策としては、まず土台となる踵をしっかりと包み込むシューズを選ぶこと。
前回お知らせしたテーピングやオーダーメイドのインソールも、足首を安定させる効果が期待できます。
加えて、ストレッチやアイシング、筋トレなどのセルフケアも欠かせません。(過去記事をご参照ください)
ただし安静時にも痛む、パフォーマンスに深刻な影響があるなどの場合、疲労骨折との鑑別が必要です。
この場合、必ず整形外科を受診し、レントゲンかMRIで患部の状態を正確に検査してください。
疲労骨折に至ってしまうと、完治には数カ月間を要します。どうぞご注意ください。