道マラ2026②シニアランナーのケガ予防
- 院長 原 則行

- 2 日前
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8月の北海道は、気温が高く平年に比べて晴れの日が多いとのこと(札幌管区気象台8/6発表)。北海道マラソン(以下、道マラ)に向けてのトレーニングにあたり、雨の心配が少ない今夏の天気をありがたく思います。

ランニングには、心臓の健康増進※1、骨密度を上げる※2、免疫系の機能増強※3といった健康効果があることが科学的に明らかになっています。これら効果も加齢と向き合う私のようなシニアランナーにとって、ありがたくうれしいものです。
その一方で運動器に負荷が繰り返しかかることによる疲労蓄積など要因から、さまざまなランニング障害=ケガが生じる心配はあります。
回復までの遅延や慢性的な変性が増すシニアランナーは、若い頃以上にケガのリスク回避に努める必要があるといえましょう。
ランニング障害として馴染みのある疾病「腓腹筋(ふくらはぎ)痛」「アキレス腱炎」「腸脛靭帯炎」など筋や腱に由来する障害は40~50歳代に多く、加齢とともに減少します。
シニアランナーといわれる50~70歳代に至っては、骨・関節の退行変性が基盤にあると思われる「腰痛」「膝痛」「足関節痛」が増加傾向となります。
シニアランナーの守りの砦は「腰」と「膝」
メディカルチェックなどで先手先手の対策を
日本臨床スポーツ医学会では、中高年ランナーにおいては医療機関でX線撮影などのメディカルチェックを受けると共に月間走行距離を200km以内に留めるのが望ましいと推奨しています。加齢による運動器の退行変性に伴う腰痛・膝痛が出現しやすいためです。
同時に女性は男性より早期に膝関節の退行変性が発現することから、中高年の女性ランナーは月間走行距離を150km程度に留めることが望ましいとされています。
ただし加齢変化を正しく理解し、時々の身体状況に適応したトレーニングを段階的に積んできたランナーは、障害発生を最小限にとどめます。十分な休養を計画・実行していれば、前述の目安を超えてのトレーニングも可能とされています。
腰の加齢変化に伴う代表的な疾病が「変形性脊椎症」です。
脊椎(背骨)のクッションである椎間板の水分が減り、弾力性が失われすり減りが始まります。椎体(骨)の棘(トゲ)のような骨の突出(骨棘)が形成され、脊髄や神経を圧迫することで痛みやしびれなどが出現します。
ランニング時は骨盤の前傾が強くなるため、腰椎前弯と骨盤前傾を減少させる目的の「ウイリアムズ体操」が予防対策として効果的です。動画を参照に取り組んでいただければと思います。

膝の加齢変化に伴う代表的な疾病には「変形性膝関節症」が挙げられます。
加齢に伴い膝の軟骨がすり減り、痛みや炎症、関節の変形が生じるもので、50歳代から始まります。
普段からの下肢の筋力強化が大事で、特に大腿四頭筋を強化するトレーニングを心がけると良いでしょう。こちらも参考動画を添えました。
「ランニングを習慣にしている人はランニング習慣のない人よりも、膝軟骨のすり減りが早いのでは」と心配するランナーもいるかもしれません。
けれど変形性関節症とランニングを含む多角的因子を対象にした研究※4において、ランナー群と非ランナー群では差がなかったと結果づけられています。
日常的に変形性脊椎症や変形性膝関節症の患者さんを多く診ている私の印象としては、ランナーむしろ体重コントロールがしっかりできているので、膝や腰の年齢的な変性は一般よりも少ないように感じています。ご安心ください。
シューズを点検と必要に応じた交換は
シニアランナーのケガ予防に必要不可欠
ケガなく走り続けるために、ランニングシューズの小まめな点検、および必要に応じた交換を行いましょう。劣化して本来の機能を失ったシューズを履き続けることは、ケガを誘引しかねないからです。
走れば走るほど靴底は摩耗するため、走行距離500kmを目処に交換することが望ましいでしょう。私は今春ランニングシューズを新調しましたが、やはり500kmを超えて以降、違和感を覚えるようになり、新しいシューズを購入しました。

アウトソールの踵の外側がすり減っていたら、早めのシューズ交換が必要です。
踵外側の摩耗が進めば進むほど膝の内側への負担が増し、シニアランナー要警戒の「変形性膝関節症」を進行させてしまう可能性があるからです。
右のシューズ選びのポイントもご参照いただき、ケガ予防に努めていただければ幸いです。
加齢期は特に、痛みを無視してトレーニングを続けることでのダメージが、より早くより大きくなります。とにかく違和感を覚えたら、AIではなく整形外科医などの専門家に相談することが、長く健康的に走り続けるための最善策です。
※1 Currie KD, Coates AM, Slysz JT, Aubry RL, Whinton AK, Mountjoy ML, Millar PJ and Burr JF (2018) Left Ventricular Structure and Function in Elite Swimmers and Runners. Front. Physiol. 9:1700. doi: 10.3389/fphys.2018.01700
※2 Lee JH. The effect of long-distance running on bone strength and bone biochemical markers. J Exerc Rehabil. 2019 Feb 25;15(1):26-30. doi: 10.12965/jer.1836564.282. PMID: 30899732; PMCID: PMC6416492.
※3 da Silveira MP, da Silva Fagundes KK, Bizuti MR, Starck É, Rossi RC, de Resende E Silva DT. Physical exercise as a tool to help the immune system against COVID-19: an integrative review of the current literature. Clin Exp Med. 2021 Feb;21(1):15-28. doi: 10.1007/s10238-020-00650-3. Epub 2020 Jul 29. PMID: 32728975; PMCID: PMC7387807.
※4 Hootman JM, Macera CA, Helmick CG, Blair SN. Influence of physical activity-related joint stress on the risk of self-reported hip/knee osteoarthritis: a new method to quantify physical activity. Prev Med. 2003 May;36(5):636-44. doi: 10.1016/s0091-7435(03)00018-5. PMID: 12689810.


