熱中症対策と北海道マラソン2025③
- 院長 原 則行
- 23 時間前
- 読了時間: 4分

北海道マラソン2025、応援をありがとうございました。
4時間34分で完走しました。全盛期より1時間半も遅いです(苦笑)。
スタート時8:30の気温は22℃、13:47最高気温26.9℃。
例年に比べ走りやすい気温ではありましたが…実走中の私には暑かったです。
その点で道マラ2025の給水所での水は冷たい状態で提供され、ありがたかったです。
私は各給水ポイントで水とスポーツドリンクを半々の割合で飲用し、さらに冷水を身体にかけて外部冷却を実施しました。
今回は、道マラ2025での体験を交えつつ「暑熱環境時のスポーツにおける水分補給」を考察した内容で、熱中症対策と北海道マラソン2025のシリーズを締めたいと思います。
過去の道マラ調査研究において、暑さに強い選手は
レース前後の体重減少量・率の変化が小さいと示唆
第4回 北海道マラソン1990において、有力選手を対象とする調査研究※1が日本陸上競技連盟によって実施。下記結果の通り一流ランナーであっても給水不足を否めない状況が明らかになりました。
体重減少量 | 平均3.2kg | マラソンでの脂肪燃焼は0.5kg前後。給水不足と推測 |
体重減少率 | 5.2%~8.91% | 発汗量に個人差がある |
同論文で興味深いのは、「給水量を差し引いたレース後の正味の体重減少量・率において、優勝した篠原選手(-2.75kg・-5.19%)は変化値が小さく、レース後半で疲労が顕著だった渋谷選手(-4.17 kg・-8.02%)、須永選手(-5.41kg・- 8.91 %)は変化値が大きかった」との記述です。
トップアスリートであっても脱水(=水分不足)を防ぐことが、少なからず結果に影響しているのではないか、と考えられる点を示唆しています。
現在の飲水ガイドラインでは体重2%以下の脱水を許容
2000年以前の海外における飲水ガイドラインは、水分目安はいずれも発汗相当量で、
全米スポーツ医学会 600~1200ml/h
ブラジルスポーツ医学会 500~2000ml/h
全米アスレチックトレーナー協会 600~1800ml/h
と、かなり多くの水分摂取に加え、運動前の水分摂取も推奨されていました。
言い方は少々乱暴ですが「とにかくたくさん飲め」の時代であったといえましょう。
後に真水を沢山飲むと低ナトリウム血症に陥る問題が露見し、また発汗量に個人差があるため、現在の飲水ガイドラインは以下のようになっています。
全米スポーツ医学会 2%以上の脱水にならないよう 個人差に応じた適量
国際マラソン医師協会 任意飲水(口渇感に応じて) (-)
全米陸上競技協会 任意飲水(口渇感に応じて) (-)
国際陸上競技連盟 脱水を防ぐよう 400~800ml/h
<留意点>
真水の飲水過多にならないよう警鐘
体重減少率2%内の脱水を許容(低ナトリウム血症の予防対策)
飲水量の具体的数値は非提示(発汗量の個人差を考慮)
北海道マラソン2025 私、原則行の個人データは
体重減少量-3.4kg、体重減少率min-4.5%
やや給水不足であったと考察
前述までに記述の通り、運動中の発汗量には個人差があります。
私は自身の発汗量を測るため、過去20km走(17℃)と30km走(20℃)でデータ収集をしました。詳細は過去記事 脱水症③適切な水分補給 を参照ください。
同テストの結果、私 原則行の発汗量は20℃前後では走行距離10kmあたり約1kgと判明。
例年、北海道マラソンは過去の調査時より高温下でのフルマラソンであるため、レース時の発汗量は4L(=4㎏)との試算でレースに挑みました。
① | 当日朝 | 体重 | 73.3Kg |
② | 出走前 | 水分補給 | 0.5kg(500ml) |
③ | 出走中 | 水分補給 | 各給水所で水とスポーツドリンクを補給(飲水量の詳細は不明) |
④ | 完走後 | 水分補給 | 1kg(1000ml) |
➄ | 帰宅後 | 体重 | 70.9kg |
⑥ | 脂肪燃焼 | 減量 | 0.5kg※フルマラソンの脂肪燃焼を500gで計算 |
各給水所での補給量が不明な点を考慮したうえでの原則行の給水量を差し引いたレース後の正味の体重減少量・体重減少率は、
体重減少量(不明③を含まない)-3.4kg(⑤-①+②+④-⑥)
体重減少率(不明③を含まない)min-4.5%[100-(⑤+⑥/①+②+④×100)]
⑤の帰宅後の体重に関して、理想である発汗量と同等の水分補給ができていれば72.8kgであるはずが、実際は70.9kg。これは1.9kg=1900mLの水分不足であったことを示します。
体重2%の脱水を許容とする現・飲水ガイドラインに照らし合わせますと、私は1.4kg=1400mLが許容範囲とされますから、許容とされる量には500ml水分不足です。
500mlの水分不足は、合格ぎりぎりC判定かとの自己評価に至っています。
あとひと口でも多く飲水できていたら…、もしかして、もう少し自分に持てるだけの能力を発揮できていた、かも…、との思いが頭をよぎります。
以上、6年ぶりに北海道マラソンを走っての感想です。
ご参考になる方がお一人でもいらっしゃれば、幸いです。
※1) 小林 寛道, マラソンの競技成績に影響を及ぼす因子 : 暑さ対策(<特集>スポーツの競技カを規定するもの), バイオメカニズム学会誌, 1992, 16 巻, 2 号, p. 69-76, 公開日 2016/10/31, Print ISSN 0285-0885, https://doi.org/10.3951/sobim.16.69, https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/16/2/16_KJ00000971692/_article/-char/ja