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Stopロコモ⑤ロコモ三大疾患

日本整形外科学会が2007(平成19)年に提唱した「ロコモティブシンドローム(運動器症候群、略称ロコモ)」の予防をテーマとするシリーズも5回目となりました。

復唱になりますが、ロコモ運動器の障害によって要介護となるリスクの高い状態を意味します。

運動器は身体を支えたり動かしたりする役割を担う器官の総称で、関節筋肉腱・靱帯脊椎や脊髄末梢神経などが該当します。

これら器官の疾患により、痛みや変形、麻痺や筋力の低下などが起きると、身体を動かすのに必要な能力が失われてしまいます

ロコモと関係が深いのは加齢などに伴う骨や関節の疾患で、特に「変形性腰椎症」「変形性膝関節症」「骨粗しょう症」の3つはロコモ三大疾患とも言われます。


ロコモの人口は予備軍を含め4700万人いると推計

東京大学22世紀医療センターの吉村典子准教授よる調査研究※1によりますと、ロコモの人口は予備軍を含め4700万人いるとされています。

また同調査ではロコモと深く関わる疾患の推計人口について、変形性腰椎症は3790万人変形性膝関節症は2530万人骨粗しょう症1300万人と示されています。


【変形性腰椎症】

最も疾患者数の多い変形性腰椎症腰痛を伴いQOL(日常生活の質)を著しく低下させてしまいます。進行し骨の変形が大きくなると神経管が狭くなるため、坐骨神経痛脊柱管狭窄症のような神経症状を併発しやすくなります。

痛み痺れなどの神経症状が強くなると歩行や立ち座りといった日常動作が難しくなり、介護が必要となる可能性もあります。

腰椎変形を健康だった元の状態へと戻すことは難しいのですが、整形外科での診察を通じて腰椎変形を抑える治療を行うと同時に、筋力強化と柔軟性を維持する運動に努めることで悪化を抑制できる可能性があります。



【変形性膝関節症】

変形性膝関節症は膝関節の軟骨がすり減って痛みを生じ歩行に支障をきたした状態です。

主たる原因は老化ですが、肥満重労働激しいスポーツといった膝への過重な負荷膝関節内の外傷なども原因となり得ます。

変形性膝関節症に限定してロコモ度別の傾向を調査した研究※2においては、ロコモ度が高いほど膝伸展制限がありADL(日常生活活動度、Activities of daily living)満足度は低く歩行時痛が高値を示す結果を報告しています。

早期に適切な治療を開始すれば、日常生活趣味の活動に差し障りのないレベルの痛みに改善することが期待できます。


【骨粗しょう症】

骨粗しょう症は骨密度が減少して骨が脆くなり、骨折しやすくなる病気です。

骨がすり減ることで背中が丸くなる脊柱後弯変形が起こりやすくなり、背中や腰に痛みを生じ歩行が困難な状態になる方も少なくありません。

気になる点が少しでもあれば早期に整形外科を受診することが重要です。

骨密度の低下を防ぐ薬物療法、背骨を支える治療装具を装着する装具療法、脆くなった骨を支える手術を行う手術療法など、症状に適した治療で悪化を防ぐことが可能です。


変形性膝関節症は大腿四頭筋など膝周囲の筋力訓練が症状の緩和に有用※3であり、

骨粗鬆症には背筋訓練や踵上げといった運動が骨強度の改善に役立つ※4とされています。運動器の病気や機能低下を防ぐには、やはり運動が大切です。


骨も筋肉も40歳頃から衰え始め、50歳を過ぎた頃から急激に低下していきます。

骨や筋肉が健康な頃から運動や食事に気を付け、予防に努めていただければと思います。



変形性膝関節症骨粗しょう症に関するさらに詳しい内容を知りたい方は、過去記事もご一読いただければ幸いです。













次回はシリーズSTOPロコモの最終回、ロコモと認知症についてご紹介いたします。

※1  Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al.: Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab. (2009) 27(5):620-8.

※2 江口 美咲樹, 宮坂 祐樹, 濱崎 圭祐, 黒川 純, 変形性膝関節症患者のロコモ度別における機能的特徴―膝関節可動域,疼痛,筋力に着目して―, 関東甲信越ブロック理学療法士学会, 2019, 38 巻

※3 岩谷力, 赤居正美, 黒澤尚, 土肥徳秀, 那須耀夫, 林邦彦, 藤野圭司, 星野雄一.変形性膝関節症に対する大腿四頭筋訓練の効果に関するRCT リハビリテーション医学 (2006)43巻4号 Page218-222

※4 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2006年版、ライフサイエンス出版、 2006


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