特に女性アスリートは貧血に注意
2022年3月13日、名古屋ウィメンズマラソンが行われ、ケニアのルース選手が女子単独レース歴代2位の2時間17分18秒で優勝。安藤友香選手が3位入賞を果たしました。
COVID-19の感染拡大防止への取り組みながらのスポーツ活動も、より自然なスタイルになってきたように感じます。 好ましい時代の変化の顕れの一つかと思います。
先のマラソンに話を戻しますと、トップアスリートを含むすべてのスポーツ選手、特に女性に気を付けて欲しいのが、鉄欠乏症貧血です。
通常、鉄は食事により摂取され、消化器官から体内へ吸収されます。けれど吸収されるのは摂取量のわずか10%ほど。 不足しがちな栄養素の一つです。
スポーツ選手は、摂取した分以上の鉄分を体外へ排出する場面が多いことが特徴です。 鉄欠乏性貧血になりやすい、ということをぜひ頭に入れておいてください。
スポーツ選手の鉄欠乏性貧血の原因としては、以下が考えられています。
筋肉量の増大に伴う鉄需要の増加
汗からの鉄の喪失
運動に伴う溶血や赤血球破壊の亢進(足底部への衝撃が原因で物理的に赤血球の破壊が亢進・溶血を引き起こす)
消化管や尿路系からの出血
トレーニングによる疲労とそれに伴う経口摂取量の低下
一過性の循環血漿量増加に伴う希釈性の貧血(運動開始早期に全身的適応現象のひとつとして循環血漿量の増加が起きるが、その結果、希釈性の貧血が生じ、一時的にヘモグロビン値が低下する)
貧血の状態での運動を続けるのは危険
貧血の状態では、酸素が十分には体内に行き渡りません。
通常、筋組織は鉄分(フェリチン)が蓄えられているのですが、貧血(鉄欠乏)時にはこの貯蔵鉄が補充されて、使い果たされてしまいます。
上記から、貧血は運動パフォーマンスに大きな影響を及ぼすということが、ご理解いただけるかと思います。さらに、
軽い運動でも筋肉痛になりやすい
筋疲労の回復が遅い
筋肉量が減少する
筋力(特に筋持久力)が低下する
など筋肉への悪影響が考えられます。
今日のスポーツ医学においては、栄養バランスを考慮した食事を摂取していれば、一般的なスポーツ活動のみが原因で鉄欠乏性貧血になることはないという認識ではあります。
とはいえ、女性は生理に伴う鉄欠乏リスクが定期的に存在するため、貧血への注意が必要なのです。
部活や自主トレに伴う疲れや筋肉の違和感は、もしかしたら貧血が原因かもしれません。
当クリニックは、北海道大学病院スポーツ医学診療センターと連携しアスリートの健康をサポートしています。
気になることがあれば、私・院長の原にお声掛けください。
次回は、スポーツ選手の貧血と「骨」の関係をお話したいと思います。
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