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ジュニア選手のケガ予防①成長期の骨折

2024年は早々に、痛ましい話題がいくつも飛び込む幕開けとなりました。

こと能登半島地震の被災者様とご関係者様に、心よりお見舞いを申し上げます。



昨年のことですが、実は11月「さっぽろジュニアアスリート」発掘・育成事業※の公開研修会「ケガ予防研修」にて講師役を務めました。

※「さっぽろジュニアアスリート」発掘・育成事業とは今後の国際大会で活躍できる次世代のトップアスリート・オリンピック選手の輩出を目指し、実績のある指導者や日常の練習及び合宿,遠征.研修会を通じてジュニア選手の育成を図るプロジェクトです。

「ジュニア期に起こりやすいケガ」をお題とした研修会には、ご来場の育成選手やプロジェクト生に加え、YouTube限定配信で全国から150名近くもの方にご受講いただきました。

今回から十数回にわたり同研修会の内容を紹介いたします。


成長期の骨折は一時的な骨の強度低下が関与


まず前提として先の研修会でいうところの「ジュニア期」は「第二次成長期」をさし、性差や個人差はありますがおおよそ7・8歳から14・15歳までに当たります。骨や筋肉などの組織が著しく成長すると同時に運動神経や自律神経など神経系器官も完成形に近づき、精神的な面を含め大人の身体になっていく時期です。


気をつけたいのはジュニア期の身体は大人のミニチュア版ではない点です。

スポーツに関していえば、もしジュニアアスリートが成人アスリートと同じ練習メニューに取り組んでしまうと、期待するような効果が得られないどころかケガにつながる可能性が高いという点を、選手本人や周囲の方にご理解いただきますようお願いします。



今回とりあげる「骨折」もジュニア期に起こりやすいケガの一つで、当院にも多くの患者さんが来院されます。スポーツ活動中の骨折は中学生になりたての13歳が多く、スポーツ活動中以外を含む骨折ですと小学校高学年の11・12歳が多いという傾向がみられます。

原因としては身長増加に伴う骨の伸びに骨密度増加が追い付かず、一時的な骨の強度の低下が関与していると思われます。



ジュニア期にみられる骨折の3つの特徴

一つめが、柔軟性のある骨がぐにゃっと折れる「若木骨折」です。

同じ外力による骨折でも大人ではポキッと折れてしまう骨が、ジュニア期では若い枝が折れるようにしなって折れます



二つめが、自力でまっすぐになっていく「自家矯正能」を有することです。

同時に骨癒合(折れた骨がくっつくこと)も旺盛で再生能力が高く、歪みは時間とともに正され元の骨の形状に治っていくのが特徴です。



三つめの特徴は、骨の中心に当たる「骨幹部」と骨の端に当たる「骨端部」の間に「骨端線」が存在することです。

骨端線は「骨端軟骨」と呼ばれる軟骨組織で形成され、これが増えることで骨が長くなり、身長が伸びます。「成長軟骨」と呼ばれることあります。

完成された骨よりも強度が弱く、強い外力や衝撃で損傷を起こしやすいのが特徴です。


骨端線には先に述べた「自家矯正能」がないため、損傷が重篤な場合は早期閉鎖して成長が止まったり、関節に変形を生じたりするケースがあるため注意が必要です。



以上のような特徴から、成長期の骨折は程度が比較的軽く転位(=骨のズレ)が重篤でなければ、保存療法(手術をしない治療)による整復と固定で経過を観察します。

一方で程度が重い場合や、骨折の部位が関節や骨端線である場合など、手術が必要なケースも多々あります。


打撲後の腫れや痛みなどの症状は、骨折の可能性を示すサインです。

専門的な診療が必要ですので、早期に整形外科を受診することをお勧めします。


次回は骨折の症例紹介と予防対策について述べたいと思います。

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