研修会「ジュニア期に起こりやすいケガ」の内容を紹介するシリーズ7回から以降数回は、「疲労骨折」を取りあげます。
疲労骨折も新入学やシーズン当初など、トレーニングの環境や内容が著しく変化した時期に発症しやすいので、今まさに注意が必要なスポーツ障害の一つです。
そもそも疲労骨折というのは、個別の外傷(転倒や打撃など)による大きな力で骨が折れる通常の骨折とは異なり、同じ部位に繰り返し負荷・ストレスが加わることで発生する骨折です。
ジュニアだけでなく中高年であっても日常的にスポーツや運動をする人、身体に負担のかかる労働に従事している人、高齢や栄養状態不良が原因で骨密度が低下している人は、疲労骨折のリスクが高いです。
診断と検査について
まず問診で痛みが生じている部位や症状、どんな時に発症するかなどを確認します。
運動中や運動後に痛みが生じ、安静時には痛みが軽くなるケースがほとんどです。
明らかな外傷を認めず、骨の直上に限って圧痛がある場合、疲労骨折を疑い診断に必要な検査を行います。
疲労骨折の初期段階においてはX線検査で異常所見を認めないケースがほとんどで、MRI検査が必要になります。
MRIはMagnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)の略で、強い磁石と電波によって、身体の内部情報を画像化する検査です。 放射線を使わないため、被ばくの心配はありません。
右にいくつかの症例のX線画像とMRI画像をご紹介します。
下肢(脛骨、中足骨、腓骨、大腿骨、骨盤)に多いのですが、肋骨や腰椎、手の指など全身におこりえます。
疲労骨折は、ぶつけたり捻ったりという明らかな外傷がないのに慢性的な痛みがある場合に疑われます。
ただし初期症状は痛みだけで、安静時には痛みが和らぐので適切な処置をしないで悪化させてしまう方も少なくありません。
部位や程度によりますが一般的に4週間ほどの休養が必要となり、重症度によってはそれ以上の期間になることもあります。
他のケガ同様、初期の段階で治療を開始すれば、復帰までの期間を短くできます。
右からわかるように、非常に早期の変化をとらえるためにはMRI検査が必要です。
一方「MRIが苦手」という方もおられます。確かに旧来型のMRIでは閉鎖的な空間での検査を強いられていましたが、最新のオープン式MRIでは圧迫感のない開放的な環境で安心して検査を受けることができます。
当院でも2023年5月にオープン型MRIを導入し診断・治療に活用しています。
日常よく使う特定の部位に慢性的な痛みがある方は、できるだけ早く整形外科を受診されることをお奨めします。
次回は疲労骨折の原因と治療について解説します。
Comentarios