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執筆者の写真院長 原 則行

熱中症のエビデンス①東京五輪の検証

7月も下旬となり、日に日に暑さが増してきました。

今月20日(木)に気象庁から発表された1か月予報では、今夏は平年よりも気温が高い厳しい暑さの夏となる模様です。

こまめな水分補給や充分な休息、適切な空調の利用を心がけ、体調管理に努めましょう。


今回から数回にわたり、熱中症に関する研究成果に注目した記事を展開いたします。

シリーズ第1回目は、2021年7月に開催された2020東京オリンピックにおける急性期医療を分析した研究※を取り上げます。


オリンピック選手100名、 うちマラソン・競歩の選手50名が熱中症を発症

同研究では、アスリート1万1420人と非アスリート31万2883人を対象に、2021年7月21日から8月8日までの怪我や病気の発生率を分析しています。


競技会場のクリニックで治療を受けたアスリートは合計567人

内訳は416人が怪我、51人が非熱関連の疾患、100人が熱関連疾患=熱中症でした。


非アスリートでは541名が同様の治療を受け、 怪我255名、非熱関連疾患 161人、熱関連疾患125名となっています。


怪我や病気の発症率が最も高かった競技は、マラソンと競歩です( 17.9%。 n = 66 )。

中でも熱中症になったアスリート100人のうちの50人はマラソンと競歩の選手です。

炎天下で長い時間、能力の限界に挑戦するマラソンや競歩のレースは、他の競技よりも過酷であることを示すデータの一つといえるでしょう。

ただし医療機関に搬送された選手は6人で、6人とも入院には至っていないそうです。


重篤化を回避できた理由として、

  • 病気の予防プロトコルを含む適切な準備

  • 医療関係者による各会場での適切な治療と輸送の決定

が肯定的な結果を導いた可能性があると結論づけています。


この研究成果からの学びは、

  • 世界トップのアスリートでも熱中症になる=夏場の運動はそれだけ過酷である。

  • 適切な処置を迅速に行えば重篤な状態には陥らない=熱中症への理解が重要。

という2点でしょう。


熱中症は、気温・湿度など環境条件を把握し、正しく対処することで予防できます

下記、スポーツ省提供による動画「スポーツにおける熱中症 対策&予防編」を参考に、夏もスポーツを安全に楽しんで欲しいと思います。




<参考>
※ Tanaka H, Tanaka S, Yokota H, Otomo Y, Masuno T, Nakano K, Sugita M, Tokunaga T, Sugimoto K, Inoue J, Kato N, Kinoshi T, Sakanashi S, Inoue H, Numata H, Nakagawa K, Miyamoto T, Akama T. Acute in-competition medical care at the Tokyo 2020 Olympics: a retrospective analysis. Br J Sports Med. 2023 Apr 13:bjsports-2022-105778. doi: 10.1136/bjsports-2022-105778. Epub ahead of print. PMID: 37055080.

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