前回に続き、今回もスポーツ選手が気を付けたい鉄欠乏性貧血を取り上げます。
貧血は赤血球が少なくなった状態をいいます。
スポーツに日常的に取り組む人は、
筋肉の増加などにより体内の鉄需要が増加する 一方で
汗や消化管などからの鉄の排出が増える 需要と供給のアンバランスから、
鉄欠乏性貧血を起こしやすい環境にあります。
ですので、意識して鉄分を補給することが大切です。
同時に
量や質は変わらないのに、前より練習がキツく感じる・疲れる
計画的に取り組んでいるのに、記録が伸びない・記録が落ちる
やる気はあるのに、みんなのペースについていけない
などの症状がある場合、医療機関で血液検査を行うなどして、対応することが大事です。
WHO(世界保健機関)の判定基準では、血液1dlあたりのヘモグロビン量が成人男性13.0g以下、成人女性12.0g以下で貧血と判定されます。
けれど一般の方より鉄の消費が多くなるスポーツ選手は、男性 15 .0g以上、女性13.0g 以上を目安とすると良いかと思われます。
特に女性は月経による出血が定期的に起こりますので、食事の量や内容に気をつけることが重要です。
貧血と骨の関係
ところで、赤血球を含む血液は、どこで造られているかご存じでしょうか。
左図の通り、骨の中心にある骨髄です。
骨髄にある造血幹細胞が鉄などの材料を集めて、血液を造ります。
身体のバリア機能を担うリンパ液も骨髄で造られています。
つまり貧血にならないためには、骨が健康である必要があるのです。
女性の場合、女性ホルモンであるエストロゲンが骨の健康維持に大きく関係しています。
エストロゲンが低下すると骨が弱くなり、疲労骨折につながるケースも少なくありません。
特に成長期にある女性スポーツ選手は、初経の遅れや連続性の無月経によりエストロゲンが低下します。
成人の女性ランナーにおいても、1カ月に300km以上のランニングでエストロゲンおよび骨量が低下するとの報告があります。
男性(特に成長期にある男児の)スポーツ選手も貧血の症状がみられるなら、骨密度の測定をするなどして骨の健康状態を正しく把握しておくと安心でしょう。
疲労骨折の予防につながるためです。
以前にも紹介しましたが、当クリニックでは最も重篤な骨折が発生する腰椎部、大腿骨部の骨密度を直接計測可能な装置を備えております。
診察を希望される方は、私・原の診察日時に受診いただければ幸いです。
いよいよ始まる競技シーズンに、ベストな状態で挑めるようお手伝いができれば、私もとてもうれしいです。