運動後には、静的ストレッチでクーリングダウンすることが一般化しています。
多くの方が静的ストレッチによって筋疲労の回復がよりスムーズになると考えられているのではないでしょうか。
けれど科学的な研究の中には、静的ストレッチによる疲労回復効果を認めなかったという報告もあります。
短時間の激しい運動後に行ったストレッチングは、筋柔軟性・血中乳酸値等の全指標において安静臥位とあまり差がなく、効果的でない傾向を示唆。運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では、ストレッチング効果を否定する結果となった。
ストレッチングの筋疲労回復に関する研究 坂上 昇, 大倉 三洋 高知リハビリテーション学院紀要/2 巻 (2001)/書誌
エモリー大学の准教授であるDavid Prologo氏の研究において、ストレッチは廃棄物である乳酸を取り除き、筋肉の回復を手助けすることに著しく「寄与しない」ことが明らかにされた。
とはいえ、上記の報告は運動後の静的ストレッチが身体に与える好ましい影響を全て否定するものではありません。
運動後のストレッチは、筋萎縮の抑制し筋肉量の減少を防ぐ
運動後のストレッチには、筋肉の萎縮を軽減させる効果が確認されています。
激しい運動の筋肉の萎縮に対する静的ストレッチの影響を分析する目的で、30人の男性(18~32歳)を3グループに分け、筋肉剛性を運動直前、および 1 時間後と 24 時間後に評価。静的ストレッチを行ったグループは、1 時間後の障害が他の2グループより有意に少なく、24 時間後も障害が少ない傾向を認めた。
Acute Effects of Stretching on Muscle Stiffness After a Bout of Exhaustive Eccentric Exercise
R. Torres1 , H.-J. Appell2 , J. A. Duarte3
Int J Sports Med 2007; 28(7): 590-594
https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/abstract/10.1055/s-2007-964865
また筋肉量の減少を防ぐ効果があることも、研究で明らかにになっています。
8名の男子大学生の外側広筋の質量をMRIによって評価される断面積に基づいて推定。運動16週間後の脱運動12週間、毎日10分間の右脚または左脚のいずれかをストレッチ。ストレッチをしなかった脚の筋肉量が有意な減少を示したのに対し、ストレッチをした脚では筋肉量の有意な減少は検出されなかった。
ディトレーニング中のストレッチングが筋量に及ぼす影響 笠原 政志, 山本 利春, 川原 貴 体力科学/59 巻 (2010) 5 号/書誌
以上から、筋肉を柔軟に保ったり、筋肉量を維持したりするために、運動後の静的ストレッチは欠かせないと言えます。
ウォーキングをする方も帰宅後しっかりストレッチを行うことを推奨します。
次回からはストレッチの意外な効果について、お伝えしたいと思います。
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