ジュニアアスリートに向けた「ケガ予防研修」の内容を抜粋紹介するシリーズ12回目のテーマは「肩のケガ(リトルリーガーズショルダー)」です。
リトルリーガーズショルダーは、投球やバッティングを繰り返すことで上腕骨近くにある成長帯(成長軟骨)に引っ張りやねじりのストレスがかかり、骨端線が離開した状態になる肩のケガです。
症状としては、
ボールを投げる時に肩が痛い
肩や腕の付け根を押すと痛い などが挙げられます。
肩を使わなければ痛みがないことが多く、日常生活にほとんど困らないため、痛みを我慢してしまうケースが多いようです。
けれど状態が悪くなれば、治療期間も長くかかってしまいます。
<参考画像>投球する肩の成長軟骨線の損傷
出典:兼松義二ほか:少年野球における上腕骨近位骨端線障害日整外スポーツ医会誌198
診断は医師による問診と、レントゲン画像で骨端線の離開や程度を診て行います。
骨の成長は個人差があるため、痛む側の肩だけでなく痛みのない側(ボールを投げない方)との比較が重要になります。
肩の外側を押したときの痛みや腕を挙げた状態で後ろに捻った時の痛みなど触診も重要な所見となります。
治療中(約1~2カ月)は投げる、打つ動作を休止
投球・打球の休止期間中は
ランニング
体幹・下肢のトレーニング
下肢・体幹・回内、屈筋群のストレッチング
回内屈筋群の筋力トレーニング
など肩を使わない体づくりを積極的に行って、筋力バランスやを整え柔軟性を高めていくと良いでしょう。
投球フォームを改善するための動画によるイメージトレーニングも休止時期に行いたいトレーニングの一つです。
発症や再発を防ぐために
肩の痛み(圧痛、投げる動作の痛みなど)が全て解消したら、投球・打球を再開します。
フォームに問題がある場合は、再開直後にフォームの改善に努めましょう。
また発症や再発を防ぐために、オーバーユースにならないよう練習の質や量に気を付ける必要があります。
また日本臨床スポーツ医学会学術委員会では「青少年の野球障害に対する提言」の中で、
●練習日数と時間について
小学生 | 週 3 日以内 1 日 2 時間をこえないこと |
中学生 | 週 1 日以上の休養日をとること |
高校生 | 週 1 日以上の休養日をとること |
●全力投球数について
小学生 | 1 日 50 球以内 試合を含め週 200 球をこえないこと |
中学生 | 1 日 70球以内 週 350 球をこえないこと |
高校生 | 1 日 100 球以内 週 500 球をこえないこと なお1 日2 試合の登板は禁止すべきである |
と述べています。
出典:日本臨床スポーツ医学会誌Vol. 13 Suppl., 2005.
野球における肘・肩の障害は成人以降も差し障る後遺症を引き起こす可能性があります。
後遺症を防ぐうえでも、治療を終え復帰した後も専門医による定期的に検診を受けることが望ましいといえます。
次回は「脳しんとう」を取りあげます。