スポーツ選手の貧血と「トレーニング」
今回は鉄欠乏性貧血をトレーニングの切り口から、考えたいと思います。
違和感に気づき、早く対処することが重要

軽くウォーミングアップしただけで息が上がる、ペースが落ちるなど、特に疲れていないにも関わらず、呼吸やパフォーマンスに異常な乱れを感じたら、貧血を疑う必要があります。
早めに病院で検査をして、貧血であれば軽度のうちに治療にあたりましょう。
めまいや頭痛、吐き気、手足のしびれなど重篤な症状に至ってしまうと、やっかいです。
貧血の状態でトレーニングを行っても、パフォーマンスアップの効果は期待できません。
日常生活にも支障がでるような重度の貧血であれば、トレーニングは中止します。
軽度であっても治療中は、トレーニングの強度や量を減らす必要があります。
また回復直後のオーバートレーニングにも注意が必要です。
通常、治療は鉄剤の服薬と食事療法でヘモグロビン濃度を少しずつ上げ、貯蔵鉄(フェリチン)量を回復していきます。
貧血の状態にもよりますがフェリチンの値が正常回復するまでは、ある程度の期間を要するでしょう。
その間は、鉄を『壊さない』『失わない』ために、やはりトレーニングの量や負荷を落とす必要があります。
特に走り込みに関しては時間や回数を減らすことが大前提となります。ですので、

体幹トレーニング
フォームの改善
ストレッチ
バランストレーニング
イメージトレーニングなど、
走り込みに比べて鉄の喪失につながりにくい練習メニューを採り入れてはいかがでしょう。
今までと違った角度からのトレーニングが、結果的にパフォーマンスアップにつながるケースもあるようです。ぜひ積極的に活用してみてください。
睡眠の質を高め、回復を促進
睡眠中には、ダメージを受けた身体の修復や成長を促すホルモンが分泌されます。
このホルモン分泌を十分に促し、骨や筋肉を健やかな状態に保つことが、巡り巡って貧血の解消にも役立ちます。
質の高い睡眠をとれるよう、次のことに気を付けるとよいでしょう。

寝る直前にスマホを見ない。
湯船に浸かり、筋肉を緩め温める。
夜、激しいトレーニングをしない (ストレッチはOK)。
夕方以降はカフェイン(コーヒー、紅茶、お茶、エナジードリンクなど)を飲まない。
※コーヒーや紅茶、お茶に含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げるので、日常的に控えるようにするのが無難です。
前回にお話しした通り、
消費エネルギーに見合った食事を毎日三食きちんと摂ること
練習の強度によって鉄分を多く含む食べ物、造血作用のある食べ物を積極的に摂ること
が大切です。

また半年に一度など定期的に血液検査を行うことで、万が一貧血であっても早期からの治療で、よりスムーズな回復が望めます。
特に女性アスリートは、将来的な疾病を予防する点において、定期的に貧血チェックをしておくと安心でしょう。