「さっぽろジュニアアスリート発掘育成事業 公開研修会」の内容を抜粋紹介するシリーズ14回は、前回に引き続き「脳しんとう」をテーマとした内容をご案内します。
スポーツによる脳しんとうは、意識や記憶に問題がなく、少し頭が痛かったり気分が悪かったりするだけのこともあります。
そしてそれら症状も比較的短い時間で消失することが多いのですが、人によっては数週間にわたって症状が続くケースもあります。
受傷後24~48時間は 頭も身体も安静に
スポーツ関連する脳しんとうの治療は、通常の脳しんとうと同様にまず頭と身体の両方を安静にすることが重要です。
脳に対する過度の刺激(長時間に及ぶスマホやPCの利用、TVの視聴、ゲームなど)を避けましょう。
成人に関しては、飲酒や運転は医師の許可が下りるまで控えることが必要です。
また症状が完全に回復するまで運動は控えます。
改善が速やかでも、無症状の状態が1週間続くまでは完全な競技に復帰するべきではありません。
選手が以前に起こした脳しんとうから完全に回復する前に別の頭部外傷を負った場合は、特に脳しんとうが起こりやすくなります。
また2回目以降は、1回目に脳しんとうになったときに受けた衝撃より弱い衝撃でも脳しんとうが起こります。
以上から少しでも症状が残っている状態で運動や試合に復帰することは重篤な状況につながる危険性が高くなると考えられます。
復帰はあせらず、徐々に…を心がけていただければ幸いです。
脳しんとうと急性硬膜下血腫
頭を強打した時に注意が必要なのは、急性硬膜下血腫です。
急性硬膜下血腫は頭蓋骨と頭蓋骨の内側で脳を包んでいる硬膜の間に出血がたまって血腫になったものです。
脳を覆っている硬膜と脳との間に血腫が溜まることにより、脳が圧排されて様々な症状を呈する疾患です。
通常、受傷後の症状は重くただちに救急搬送のうえ、適切な処置を受ける必要があります。
2024年7月13日の報道では、京都府警の警察学校で柔道の訓練中に女性巡査が頭を強打、「急性硬膜下血腫」と診断され緊急手術を受けたものの亡くなったとの発表がありました。
一方、受傷直後は意識障害がないけれど、一時的な意識障害だけですぐによくなったように見えるケースもあります。。
けれども血腫が増大することで後から頭痛や嘔吐などの症状が現れ、その後、意識障害や麻痺などの神経症状が徐々に悪化していく場合があるので注意が必要です。
放置すると間接的に生命中枢へ影響が出て、命を落とす可能性もあるため、救急処置が必要となります。
受傷時の状況や受傷後の症状から、頭部への衝撃が強かったことが推測される場合、例え症状が軽いように見えても脳神経外科医の診察を受けるよう救急搬送を手配することが望ましいでしょう。
次回からは、特に今時期に気を付けたい「熱中症」について2回にわたり解説します。