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執筆者の写真院長 原 則行

骨と筋肉Q&A⑩「筋トレ」は「脳トレ」


「骨と筋肉Q&A」10回目は、前回の筋トレの意外な効果の続編です。


Q.「筋トレが認知症予防に   効果があるのは、   なぜですか?」
A. 下記のようにいくつか  要因が挙げられます。

要因①イリシンがBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促進


筋力トレーニングなどで体を動かすと、骨格筋などからイリシンというホルモン物質が分泌されます。


イリシンは血流に乗って脳に運ばれ、脳の内部でBDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれるタンパク質の分泌を促進します。



BDNFは、脳の神経細胞の成長やシナプス結合によるネットワーク構築に関与しています。


よってBDNFを増やすイリシンは、筋力トレなどの運動が学習や記憶、認知機能の改善に好作用するキーファクターになる、というわけです。※1

※1 
July 2010Neuroscience Letters 479(2):161-5  Joshua F Yarrow 「Training augments resistance exercise induced elevation of circulating brain derived neurotrophic factor (BDNF)」

また同様の神経栄養因子で、神経細胞の生存維持や神経突起の伸長促進、神経伝達物質の合成促進などに作用するNGF(神経成長因子)も、運動によりその発現が増強されるという知見が、ラットを使った実験により実証されています。



要因②IGF-1(インスリン様成長因子)の活性化


IGF-1(インスリン様成長因子)は多様な神経保護効果を有し、血管新生、神経新生、ニューロンの興奮性、認知機能などに関わっています


認知機能が低下した高齢者においては、IGF-1は低い値を示します。

筋トレを行うことで、認知機能に関わるIGF-1レベルがアップすることが明らかになっています。※2


※2 
Rocz Panstw Zakl Hig 2016;67(2):105-11. Marta Majorczyk 「Effect of physical activity on IGF-1 and IGFBP levels in the context of civilization diseases prevention」

その他の要因

③筋トレにより脳への血流が増加し、中枢神経系に豊富な栄養と酸素が運搬されることから、即時的な認知機能の向上に寄与しているとの推察。※3


最大心拍数の増加により誘発されるストレス・ホルモン=コルチゾールが生理学的覚醒を引き起こし、認知機能の向上をもたらすという説。※4


など、筋トレによる認知症の予防効果のメカニズムが、科学的に立証されています。


※3
Shigehiko Ogoh  2009 「Cerebral blood flow during exercise: mechanisms of regulation」

※4
Chia-Liang Tsai 2014 「Executive function and endocrinological responses to acute resistance exercise」

上記は認知症予防が必要な高齢者に限った話でなく、受験生や社会人など全世代にとってあてはまる有益な情報です。


おおきくまとめると「筋トレ」はそのまま「脳トレ」であるということですね。

ブログを書きながら私自身、今日から筋トレに努めたいと思った次第です。

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