前回は「ゆとりのある靴が、いかに健康的でないか」についてお伝えしました。
今回は、重さを切り口に、足の健康と靴の関係をご説明します。
Q.靴は軽ければ軽い方が、足にいいですよね?
A.いいえ。軽い靴は足に悪いこともあります。
一般的に「軽く」「柔らかく」「ゆとりのある」「楽な」靴が足にいい、と思われている風潮があるようです。
けれど実は、「軽く」「柔らかく」「ゆとりのある」「楽な」靴が、足を疲れさせたり、変形させたりする原因となるケースが多くあります。
少し話がそれますが、登山用シューズはかなり重量があります。
理由は、草や砂利、岩などがある険しい道や、起伏の激しい山道、いわゆる悪路でも安全かつ快適に歩けるよう機能面が徹底的に強化されているからです。
雨や泥、石など外的な危険因子から足を保護する性能も、とても優れています。
機能を重視した靴が重いのなら、軽い靴はどうでしょう。
もちろん機能が損なわれることなく軽量化されていれば、問題ありません。
けれど軽さをアピールする靴の中には、必要な機能を省いたり、おろそかにすることで軽量化を図っているものも多くあります。
軽ければ軽いほどいいという考えで靴を選ぶのは、改めるべきかと思います。
Q.靴選びのコツは?
A.「手で持つと重く、履いて歩くと軽く感じる」 というのが基本です。
先に申し上げた通り、必要なパーツにしっかりした素材を使い、必要な機能や性能を有する靴は、そこそこ重たいです。
手で持った時には、ずっしりと重量感があります。
重量があっても足にきちんと合ってさえいれば、歩きやすく軽く感じるのです。
歩きやすさの理由を、振り子運動の原理で説明しましょう。
歩く時は、けり出した足の力を使って前へ、前へと移動します。
振り子の先端の重りにあたるのは足。
軽いよりも重たい方が、運動で生まれるエネルギー量が大きくなりますから、自然と足は前へ運ばれます。
力いっぱいけり出さなくても足が進む感覚を、「軽く」感じるというわけです。
上記の原理をあてまめますと同じ距離を進む場合、軽い靴の方がより強い力が必要です。
スポーツ界では常識ですが、競技用の軽いシューズを履きこなすには、より強い筋力や脚力、瞬発力、持久力などが求められます。
プロご用達のシューズを履いたからといっても、それに見合ったポテンシャルを持ち合わせていなければ、パフォーマンスの向上は望めないことを理解しましょう。
もちろん足の上げ下げに問題があり、すり足歩行になってしまうご高齢の方など、軽い靴の方が適した方もおられます。
そうした場合、長い距離を歩かないよう心がけると安心です。
次回は、靴の固さなどについて話したいと思います。
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