8月も11日となり、日本選手たちの活躍に沸いたパリ五輪が閉幕しました。 ホットなニュース同様、全国的に気温が高まり、本日なんと名古屋市では7月25日以降、18日連続の猛暑日を観測しているそうです。
気象庁と環境省は11日、沖縄と九州~関東、北陸28都府県に熱中症警戒アラートを出し、熱中症への警戒を呼びかけています。
前回の記事を参考に、体調管理や水分補給、睡眠や栄養をしっかり確保するなど対策を心がけていただければと思います。
「さっぽろジュニアアスリート発掘育成事業」の公開研修会では、熱中症対策の一つである「水分補給」と深く関わる「低ナトリウム血症」を紹介しました。
今月末の北海道マラソンに出走されるランナーの方々はもちろん、夏場も1時間以上のトレーニングを積むアスリートの皆さんへの情報提供となれば幸いです。
失われた体液の分量を水だけで補おうとすると
低ナトリウム血症を発症
低ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が非常に低い状態をいいます。
原因は、失われた水分を取り戻そうとして水分だけを取り過ぎること(=水中毒)です。
症状としては動作が緩慢になり、疲労感に見舞われ、頭痛や吐き気、嘔吐などが起こります。
悪化すると筋肉のひきつりやけいれんなど発作が起こり、意識の混迷あるいは完全に反応できない状態(昏睡)に陥ります。
マラソンやトライアスロンのほか、ハイキング、ラグビー、アメリカンフットボール、ホットヨガなどでも発症例があり、中には死に至ったケースも報告されています。
喉の渇きに応じて水分を摂取
同時に水と合わせて塩分も補給
脱水を防ぐために適度な水分補給は必要ですが、一度に水分を吸収できる量は個人差があります。ですので一律に摂取するタイミングや量などを定めることは困難です。。
誰しもに共通しているのは、ナトリウム濃度を低くしないために一度にたくさん飲むのではなく“こまめな摂取”を心がけることが大切だという点です。
臨床スポーツ医学の専門誌「Clinical Journal of Sport Medicine」(2015; 25: 303-320)で発表された声明※1では、マラソン選手においては喉の渇き具合と血液中のナトリウム濃度に関連があり、喉の渇きに応じて水分摂取すると血液の浸透圧が維持されたという研究結果があることを紹介。その結果に基づき、喉の渇きに応じて水分を補給する「drink to thirst(喉が渇いたら水分補給)」戦略を推奨しています。
もし可能であれば、レース本番を想定した事前トレーニングで「喉が渇いたら飲む」という水分補給を試し、自分に適した水分を計画して本番に挑むと安心でしょう。
間違ってもレース中あえて大量に水を飲んだり、逆に水分を摂らなかったりすることのないようお願いします。
水分だけでなく発汗によって失われた塩分を補給することも心がけてください。
同時に糖質を摂取するとナトリウム(塩分)が身体に取り込まれやすくなります。
糖質の濃度は約3~8%程度(100mlあたり約3~8g程度)が適切な濃度※2とされています。
※1 Tamara H.B. Statement of the Third International Exercise-Associated Hyponatremia Consensus Development Conference, Carlsbad, California, 2015. Clinical Journal of Sport Medicine. 2015; 25:303-320.
※2 JISS国立スポーツ科学センター『競技者のための暑熱対策ガイドブック』より
暑い環境での運動には危険が伴います。
上記を参考にご自身に適した水分補給を実践し、トラブルを回避していただければ幸いです。
次回はキズ(裂傷)を話題にとりあげます。