top of page

シーズン初めに多いケガ③リトルリーグ肩


今回取り上げる「リトルリーグ肩」は、小・中学生の野球選手に多くみられるスポーツ障害です。


成長期の腕の骨には、肩の付け根よりに骨の伸びしろ(上腕骨近位骨端線)があります。


この部位の組織はデリケートであるため、投球などの腕に捻じれを伴う牽引ストレスが繰り返されることで損傷(=骨端離開)し、肩に痛みを生じます


通常はプレー中に痛みを発症しますが、症状が進むと腕を持ち上げたり、安静時であったりしても痛みを発症する可能性があります。

外見上の変形や腫れが認められることや、肩の可動域が制限されるケースもあります。


9歳から12歳までの野球選手2055人を調査した研究*1では、13.4%に相当する275名が投球側(利き腕)の肩に痛みを自覚。痛みを伴う選手のうちX線撮影に同意した41名の36.6%がリトルリーグ肩の結果を示したとの報告があるほど、少年野球や中学の野球部員が罹患しやすいスポーツ障害です。

テニス選手*2や体操選手*3の症例報告もありますので、肩を回旋させる動作を伴う競技全般で注意が必要といえるでしょう。


診断は、問診(状況の確認)や触診(圧痛部分や動作による痛みの確認)、検査画像(X線写真の左右差の確認)で総合的に判断します。

より厳密な診断のためMRI検査を行うケースもあります。

上図はKanematsu分類*1


治療はグレードにもよりますが、通常は4~6週ほど競技活動を禁止します。

重い荷物を持つなど肩に負担のかかる動きを制限することも大事です。



損傷部位である上腕骨近位骨端線は回復力が強いため、安静にすれば自然に治癒します。

安静期間中は、体幹や下半身、肩の柔軟性の向上に努めましょう


痛みが軽くなったら運動を再開しますが、痛みが増したら即、運動を中止するなど経過を慎重に追う必要があります。


自己判断で運動を再開すると治癒するまでの期間が長くなったり、重症化したりする懸念があります。

リトルリーグ肩を患う野球選手の再発に関連する要因を調査した研究*4では、診断の直後から投球を禁止し安静にすること、肩の柔軟性を高めることが、良好な復帰や再発予防に関与していると示しています。


またKanematsu分類のグレードⅢのような過度の変形は、将来にわたって影響を及ぼす可能性もありえます。


治療中は選手自身が、医師や理学療法士の指示のもとセルフケアに努めることが大事です。

そして保護者やコーチがスポーツ障害を理解し、適切なレベルでの運動や休息を促し、再発や重症化のリスク軽減を支援するようぜひお願いします。


次回はアキレス腱症を取り上げます。




*1  Kanematsu Y, Matsuura T, Kashiwaguchi S, Iwase T, Suzue N, Iwame T, Fukuta S, Hamada D, Goto T, Sairyo K. Epidemiology of shoulder injuries in young baseball players and grading of radiologic findings of Little Leaguer's shoulder. J Med Invest. 2015;62(3-4):123-5. doi: 10.2152/jmi.62.123. PMID: 26399334.

*2  Heyworth BE, Kramer DE, Martin DJ, Micheli LJ, Kocher MS, Bae DS. Trends in the Presentation, Management, and Outcomes of Little League Shoulder. Am J Sports Med. 2016 Jun;44(6):1431-8. doi: 10.1177/0363546516632744. Epub 2016 Mar 16. PMID: 26983458.

*3  Dalldorf PG, Bryan WJ. Displaced Salter-Harris type I injury in a gymnast. A slipped capital humeral epiphysis? Orthop Rev. 1994 Jun;23(6):538-41. PMID: 8065812.

*4 Harada M, Takahara M, Maruyama M, Kondo M, Uno T, Takagi M, Mura N. Outcome of conservative treatment for Little League shoulder in young baseball players: factors related to incomplete return to baseball and recurrence of pain. J Shoulder Elbow Surg. 2018 Jan;27(1):1-9. doi: 10.1016/j.jse.2017.08.018. Epub 2017 Oct 17. PMID: 29054382.

閲覧数:69回

最新記事

すべて表示

Comments


ご理解とお願い 免責事項

  • 院長ブログの記事は執筆者個人の考えに基づく内容です。

  • 記事中にある提案等は、自己責任にて実施いただきますようお願い申しあげます。

  • ブログ記事の情報を用いた行為における損失・トラブル等に対して、執筆者は何ら責任を負うものではありません。

  • ブログ記事は予告なしに内容変更や削除することがございます。

  • ブログ記事の内容に関してメール等を通じての個別の相談は受け付けておりません。

bottom of page