院長 原 則行

2023年6月21日2 分

シーズン初めに多いケガ⑥シンスプリント

初めに6月も下旬に入り、シリーズのテーマ「シーズン初め」とは時期が合わなくなっておりますこと、深くお詫び申し上げます。

今回取り上げるシンスプリントは、シーズン明けに加え、運動を始めたばかりの選手運動をしばらく休んでいた選手の復帰直後に発症しやすいスポーツ障害の一つです。

脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)という和名の通り、オーバーユースを主たる原因とする脛骨骨膜の炎症です。

過去記事でも何度か取り上げましたので、ぜひご一読ください。

今回は、より効果的なシンスプリントの予防および治療法を確立させることを目的として実施された研究※の成果に基づき、「後脛骨筋」に注目します。

同研究では、大学男子陸上中・長距離選手14名(シンスプリント両側既往者6名、片側既往者1名、非既往者7名)を対象に、下腿各筋の弾性率を測定。シンスプリント既往群は非既往群に比べ後脛骨筋の筋硬度が高いことを明らかとし、後脛骨筋を柔軟性に保ち、運動による下腿の筋膜および骨膜への伸張ストレスを軽減することがシンスプリントの予防に繋がることを示唆しています。

後脛骨筋は足の内側にある舟状骨を上方に引っ張り上げ、足裏アーチ(土踏まず)を形成する役割を担います。

また足首の「底屈(=滑車状の動作)」「回外(=内側を上に引き上げる動作)」「内反(=底屈と回外を同時に行う動作)」に関与し、足裏にかかる荷重を調節する機能もあります。

後脛骨筋が硬いとシンスプリントに加え、シーズン初めに多いケガ⑤で紹介した足底腱膜炎を発症する可能性もあり得ます。

下記の動画などを参考に運動後や就寝前のストレッチを習慣化し、後脛骨筋の柔軟性を保つよう心がけていただければと思います。

特に10代のアスリートは骨や筋が未成熟なことや、体力や回復力があるが故にオーバーワークになりやすいため、シンスプリントには注意が必要です。

そして過去記事で述べております通り、鑑別が必要な疾患に「疲労骨折」があります

足の脛に痛みを覚えたら、できるだけ早い段階で整形外科を受診しましょう。

次回「疲労骨折」を取り上げ、シーズン初めに多いケガのシリーズ最終回とします。

しばらくお待ちください。

<参考>
 
※佐伯 純弥, 長谷川 聡, 中村 雅俊, 中尾 彩佳, 庄司 真, 藤田 康介, 簗瀬 康, 市橋 則明, シンスプリントと関連するのはどの筋か, 理学療法学Supplement, 2016, 2015 巻, Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集), セッションID P-SP-05-5, p. 1293-, 2016/04/28

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